The Global Startup Ecosystem Report 2022
創業者が自分の価値観をオープンにし、率直に語るべき理由
この寄稿文は、著者が個人的な立場で作成したものです。本記事で述べられている意見は、著者個人のものであり、必ずしもスタートアップゲノムの見解や立場を反映するものではありません。
“私たちが共に創り上げていく未来にあなたがどのように貢献したかが、あなたの功績となる。”
私が創業パートナーを務めるミッションドリブン型のベンチャーキャピタル「Renewal Funds」では、私たちの生涯の選択は人間と地球というキャンバスに描き出すものだと考えている。個人的な選択も仕事上での選択も、次世代に残す功績に影響を与えるのだ。資産も、起業の成功も、その人がどういう人であるかを示すものではない。むしろ、私たちが共に創り上げていく未来にあなたがどのように貢献したかが、あなたの功績となる。
投資家として、私たちの仕事は未来をより良くするためのソリューションに取り組んでいるビジネスや起業家を見つけることだ。そして、このビジョンを出資を求める創業者、私たちのファンドに出資してくれるLP、私たちが活動する幅広い起業家コミュニティに分け隔てなく共有する。私たちは、個人としてのあり方から潜在的なパートナーへの接し方まで、当社のすべてがこの倫理観を伝えるものでありたいと願っている。
これは、お互いが取引をするかしないかを選択するための判断軸として機能する。私たちの価値観を明確かつ率直に示すことは、健全な関係を育むために必要な土壌を作ることにもつながる。ビジネスでは、常に困難や厳しい選択、必要なトレードオフが存在している。最も協力的な者であっても、時には世界の見方が異なることがある。最初から自分の価値観を明らかにすることで、誰もがお互いを尊重し、納得のいく決断が出来る様になる。
コミットメントを声高に、そして早く宣言する
私たちは最初から価値観を明確にし、コミットすることを勧めている。最初から「なぜ？何があなたの起業家精神に火をつけたのか？それは人類の向上、地球の幸福、そして未来の世代に貢献するものなのか？なぜ、この事業に自分の人生を捧げるのか、その理由は明確か？ 」創業者自身が「なぜ」を理解することは重要な第一歩だが、私たちは創業者が「なぜ」を共有し、ビジネスの意思決定がその目的に沿っているかどうかを確認するためのシステムを構築することも推奨してる。そのため、私たちは営利企業の社会的・環境的パフォーマンスを認証するB Corporationなど、さまざまな認証機関に参加している。私たちは創業者にこの仕組みを強制することはしないが強く推奨し、その選択肢を理解してもらうためのサポートを提供している。
このような構造は、創業者が自分たちの影響を検証し、追跡し、自分たちのしていることを他の人が理解できるように説明するのに役立つ。また、製品、ビジネス、社内文化、サプライチェーン、外部性のすべてが人類に貢献しているかどうかを自問し、未来の世代のために世界をより良くするための視点を表現するよう、あなたを駆り立てる。
B Corporationとして事業を立ち上げるということは、自社の価値観に公約し、製品やサービスの最終的な成果をボトムライン以上に重視することを意味する。ミッションへのコミットメントがインパクトを生み、それがさらにミッションへのコミットメントを強めるという、一種のシステム的なフィードバックループを生み出す。
このような価値観へのコミットメントは、一緒に仕事をする相手を選び、その協力者をどのように扱うかという点でも、輝きを放つはずだ。採用候補者や投資家を探す際に、自分の価値観を声高に主張することは、まったく異なるタイプの哲学を持つ人たちにもあなたの基準や期待について公平なシグナルを送ることになる。どんな人間関係でもそうだが、時には期待通りにいかないこともある。しかし、自分にとって何が重要かを正直に、率直に伝えることで、同じようなコミットメントを持つ人を見つけることができ、将来的に多くの混乱や困難を避けることができる。
自分の価値観を生きることが、世界を変える
今、未来を憂い、課題を考え、解決策を導き出すことに人生を捧げる人たちが爆発的に増えている。その仕事は、時には深い技術的な革新に関わることもある。時には、スーパーで買い物をする人々に影響を与える消費財も含まれる。起業家たちは、私たちの都市、交通システム、エネルギーシステムを革新しているのだ。Renewal Fundsは、家庭への電力供給に関わるマーケットプレイスから、カーボンニュートラルなスナック菓子まで、あらゆるものに投資している。起業家精神は物事を違った角度から見る、あらゆる種類の人々で溢れる巨大な世界だ。
私たちは異なる視点、異なるスキルセット、そして異なる理由で物事を行うかもしれない。ミッションドリブンな創業者になるための方法は無限にあると言える。しかし、私は、自分の価値観に基づいて行動し、そのコミットメントを声高に、そして早く宣言することを強く求める。
現実的には、同じ志を持つ協力者を見つけ、ミッションに沿った会社運営をスムーズに行うことができる。しかし、それは私たちを取り巻く文化を形成するものでもある。私たちが自分の最も深い価値観に従って生き、一緒に働く人たちを自分の価値観に沿って扱うならば、その最も深い価値観を、お金を稼ぎ、売買するという現実的な世界に持ち込むことができるのだ。そして、私たち一人ひとりがその世界に最も良い影響を与えることができるようになるのだ。