The Global Startup Ecosystem Report 2022

グローバルスタートアップ サブセクター (分野別)分析

主な調査結果

  • GSER2021以降、シリーズA案件数の伸びは全体的に鈍化しているが (2021年から2022年にかけて全体的に下降)、Exit Valueの伸びは著しく加速している (2021年から2022年にかけて大きく右肩上がり、いずれもGlobal Sub-Sector Lifecycleチャート参照)。Exitの急増は、ベンチャーアセットクラスを押し上げ、VCファームによる資金調達と投資の過去最高を記録する結果となった。
  • サイバーセキュリティは、ハッキングや情報漏えいの急増、デジタルトランスフォーメーションやリモートワークの加速などにより、ますます注目されている。
  • どのサブセクターも全体的に成長が加速しており、中でもAI・ビッグデータ(BD)、ブロックチェーン、FinTech、先進製造業の成長が大きい。
  • AI・BDは急成長し、スタートアップのほぼ4分の1を占め中心的要素になりつつある。その5年間の成長率は、シリーズA案件数で51%、Exit数で104%となっている。
  • CleanTechは、シリーズA (35%増)とExitの両方で件数が大幅に増加した唯一のサブセクターで、気候変動への対応の緊急性に拍車がかかり、その結果、投資家の注目度も高まっている。
  • 先進製造業におけるシリーズ A の資金調達は、グローバルなサプライチェーン問題や、自動化、監視、故障予知による効率と生産性の向上に焦点を当て、5 年間で 70% 増加している。


スタートアップサブセクターの世界動向

COVID-19のパンデミックは、引き続きサブセクターの動向に影響している。調査期間中、2022年も同様に世界のサプライチェーンは大きく混乱した。AI&BDと先進製造業は、メーカー、物流会社、小売業者すべてがプロセスの効率と生産性の向上を目指し、成長を遂げた。例としては、自律配送に使用する完全自律走行車の開発元であるシリコンバレーのNuroは2021年に後期資金調達ラウンドで6億ドルを調達した。他にも2021年に7億5000万ドルを調達した北京のAIプラットフォーム、4paradigmが挙げられる。


さらに広く見れば、投資額と案件数の両面でAI&BDが他の業界と同様に成長しつつあることは、機械学習がいかに私たちの日常生活の多くの局面で活用されているかを示している。データに基づく意思決定とアルゴリズムによるプロセスは、急速に当たり前になりつつある。



パンデミックによってデジタルトランスフォーメーションが加速し、世界の多くで遠隔学習がニューノーマルとなった今、EdTechの成長は驚くべきものではないのかもしれない。EdTechベンチャーキャピタル案件への投資額は、アメリカと中国が最も多く、インドが3位である。シード段階でのEdTechへの投資額では、インドはアメリカに次いで2位である。しかし、中国がEdTechの取り締まり政策を導入しているため、中国の強い地位に影響を与えている可能性がある。


2021年7月現在、中国の教育系企業は非営利でなければならず、IPOを目指したり、外国資本を取り入れたりすることはできない。また、上場企業が学習塾に投資するための株式発行や資本市場での資金調達を行うことは禁止され、外国企業が学習塾の株式を取得・保有することも禁止されるなど、さまざまな制限が設けられている。世界最大のEdTech市場である4億人以上の生徒を抱える中国では、こうした政策がサブセクターの成長を抑制する可能性があるのである。


ブロックチェーンは、過去5年間で初期段階の資金調達において91%、昨年からは12%の伸びを示している。この技術は、主に銀行や金融サービス分野で利用され続けており、従来のモデルが変わりつつある。しかし、ブロックチェーンを利用したソリューションは、サプライチェーン・レジリエンスの構築、安全な医療データ交換の確保、接客業の改善など、さまざまな用途にも利用されている。

アーリーステージの資金調達案件の5年間での変化率

急成長しているサブセクター
先進製造業とロボティクス (70%)
AI・BD (53%)
ブロックチェーン (91%)
EdTech (44%)

減少しているサブセクター

AdTech (-29%)
デジタルメディア (-27%)

成長期のサブセクター

成長ステージの4つのサブセクターは、5年間でアーリーステージの資金調達数が平均64%増加し、Exit数も平均71%増加するなど、驚異的なペースで規模が拡大している。

EdTech は昨年の成熟フェーズから今年は成長フェーズに移行しており、Exit数が 67%増、シリーズ A数が 44%増となったことが反映されている。Edtech系スタートアップ全体では5%増となり、スケールアップの増加の代表格である。

成長期のサブセクターの中では、AI・BDが最も大きく、全世界のスタートアップの24%を占めている。このサブセクターは昨年から74%成長しており、中でもAIは84%も成長している。成長率の大幅な増加は、VCの総投資額を反映したものである。



成熟期にあるサブセクター

昨年のレポートから、成熟期段階のサブセクターに多少の変化があった。サイバーセキュリティ、CleanTech、ゲーミング、ライフサイエンスは引き続き成熟フェーズにあり、FinTechは成長期から成熟期に移行した。EdTechとAgTech & New Foodは成熟期から成長期に移行している。

成長段階のサブセクターを合わせると、過去5年間でシリーズA資金調達額は37%、Exitは31%の伸びを示した。




衰退期のサブセクター

過去5年間、AdTechとデジタルメディアは、シリーズA調達とExitの成長率の低下によって示されるように、他のスタートアップのサブセクターと比較して伸び悩んだ。