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エコシステムのライフサイクル分析
スタートアップ・エコシステムの進化は、複雑で多面的なプロセスであり、自然界における生態系のように、異なる段階を経て進化するものである。そして各段階には異なる特徴やリソースの特性、ニーズがある。ここでStartup Genomeの分類法に従えば、スタートアップ・エコシステムはActivation、Globalization、Attraction、そしてIntegrationの4段階 (ライフサイクル・フェーズ)に分類することができる。それぞれのスタートアップ・エコシステムは明確な特徴を持つとともに、ある段階から次の段階へと進歩するためのはっきりとしたトリガーを有している。
ライフサイクル・フェーズは、適用すべき戦略を決定する上で重要なものとなる。Startup Genomeは、分析、評価、コンサルティングといった長年の活動を通じて、根本的に異なる戦略 (Norm Strategies)がライフサイクル・フェーズと相関していることを発見した。ライフサイクル・フェーズに同期していないエコシステムは、正しいことを行っていたとしても、誤ったタイミングで行っている可能性があり、スタートアップ・エコシステムを改善しないままに時間とお金を浪費していることになる。私たちのエコシステム・アセスメント・サービスは、対象のエコシステムが現在のライフサイクル・フェーズに適した戦略を決定し、最終的にさらなる段階に進むための支援をする。
アクティベーション (Activation)フェーズ
アクティベーションフェーズのエコシステムは、スタートアップの限られた経験とスタートアップのわずかな産出(1000社未満)を特徴とし、主な焦点はスタートアップの産出(または地域でのスタートアップの数)、アーリーステージの資金調達(シードおよびシリーズAラウンド)及び、より繋がりのある地域コミュニティを成長させることである。このエコシステムは国内だけでなく、時には地域でも有数のエコシステムである。マニラ、カルガリー、バーレーンがその例である。
アクティベーションフェーズのエコシステムの主な課題は、リソースの流出(スタートアップ、人材、資本)が国内およびグローバルなレイターフェーズのエコシステムに発生することである。このため、地方自治体やコミュニティリーダーによる重要な投資なしには、エコシステムをグローバリゼーションフェーズにまで成長させることは非常に困難である。
イノベーション市場(米国、西欧、東南アジアの一部など)とは異なる、あるいは地理的に遠いエコシステムにあるスタートアップは、地域の問題を解決しグローバルなイノベーションを地域の現実に適応させることで加速度的に成長することが多い。クアラルンプールに設立されたGrabはその好例で、UberのモデルをベースにしながらもUberのマレーシア市場参入を非常に困難にしていた現地の決済問題を解決し、Grabは後に東南アジア全域の決済におけるリーダー企業となり、シンガポールに本社を構えた。
グローバリゼーション(Globalization)フェーズ
グローバリゼーションフェーズのエコシステムは、1,000社以上のスタートアップの産出、エコシステム内でのスタートアップ経験の増加、そして国家的なリソースの誘致のきっかけとなる一連のExitによって特徴付けられる。これらのエコシステムは国内のリーダーであり、時には地域のリーダーでもある。例としては、メルボルン、マイアミ、ヘルシンキなどが挙げられる。
この段階へのトリガーには、スタートアップ経験の増加(知識とリソースの蓄積)が含まれ、これにより地域的に印象的なExit(通常1億ドル以上)が生まれる。
誘致 (Attraction)フェーズ
誘致フェーズのエコシステムは、通常3,000社以上のスタートアップによって特徴付けられ、主な目的はエコシステムの規模を大幅に拡大し、リソースのギャップに対処するためにグローバルなリソースを引き寄せるように推進することである。このフェーズのエコシステムは通常地域のリーダーである(アメリカの場合は国内リーダーである)。シンガポール、アムステルダム、ベルリン、シカゴなどが例として挙げられる。
このフェーズに入るきっかけとしては、ユニコーン企業の誕生や10億ドル以上のExitなど、世界的に印象的な出来事が挙げられる。
統合 (Integration)フェーズ
統合フェーズのエコシステムは、5,000社以上のスタートアップによって特徴付けられる。エコシステムはグローバルな知識構造に統合され、グローバルなビジネスモデルを生み出し、更なるグローバル市場へのリーチを達成する。この段階にあるエコシステムは世界的なリーダーとされ、地域経済における価値創造の主要セクターのひとつとみなされている。シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドンなどがその例である。
統合フェーズのエコシステムは、大規模なイノベーションと公平な成果を支援するために、経済的、社会的、規制的基盤との連携を深めることを優先すべきである。
このエコシステムの段階へのトリガーには、自己的に持続可能なGlobal Connectednessの水準と、極めて高いグローバルリソースの訴求力が含まれる。
Ecosystem Support Organizationのポートフォリオ管理:未来への備えは万全か?
Tech系エコシステムは、従来のどの産業分野よりも指数関数的に速いスピードで持続的な成長を示している。Tech系エコシステムが世界中で成熟し、より多くの都市や地域が高度に機能的なTech系起業家コミュニティを持つようになり、支援要件も急速に変化している。エコシステムのリーダーや政策立案者は、発展戦略と起業家へ提供する支援メカニズムをそれに合わせて適応させることが不可欠となる。Ecosystem Support Organization(ESOs)はエコシステムの発展に大きく貢献してきたが、変化のペースを考慮すると、既存のESOのポートフォリオが起業家の支援ニーズを反映しているかどうかを問い直すことが極めて重要である。アーリーステージのサポートに主に注力
2022年に実施した調査によると、現在のESOプログラムは主にアーリーステージのエコシステム(全支出の95%という驚異的な割合がこのエコシステムに向けられている)と、事業を開始する起業家のニーズに焦点を当てている。しかし、多くのエコシステムが著しい成長を示しているため、発展の軌跡と起業家支援のニーズに対するそれぞれの意味を理解することが不可欠である。起業家が重要な成長期とグローバル展開期を乗り切るために必要なサポートを提供しているエコシステムは、世界的に見てもごくわずかである。シナリオモデリングは、エコシステムの成長とスタートアップコミュニティの構成の変化、そして進化する支援要件を理解するのに役立つ。主要なリソースと成功要因のギャップを特定し、それに対処することが不可欠である。エコシステムのリーダーは、どのような支援システムが存在しどのようなリソースのギャップが残っているのかを明確に理解する必要があり、それが資金調達の問題であれ、人材へのアクセスの問題であれ、協力と地域的なつながりの欠如であれ、ESOのポートフォリオはこれらのギャップに対処しなければならない。既存の起業家エコシステムをデータに基づいて詳細に評価し、計画を立てる必要がある。
Deep Techのニーズへの対応
Deep Techはエコシステムの成長の主要な原動力となっており、この分野で活動するファウンダーは以前の世代とは大きく異なるニーズを持っている。こうした新分野での支援プログラムにはより高度な技術的深みと専門性が求められ、開発と投資のサイクルも大幅に長期化する傾向にある。リーダーたちはDeep Techの機会を理解し、プログラムの設計と、長期的な資金調達のニーズを認識することの両面から応じて支援プログラムを調整することが極めて重要である。Deep Techの台頭により、ESOの専門家向けプログラムも参加者の誘致、満足度、成果の高さを示している。例えば農業やバイオサイエンスなど、個々のセクターを対象とした専門家向けプログラムは、大学の研究者とダイナミックな起業家コミュニティとの間の架け橋となり、効果的な協力関係を築くのに役立っている。スタートアップコミュニティのリーダーたちは、インキュベーションからレイターステージのスケールアップに至るまで、これらの新しいスタートアップに求められる複雑な技術、規制、ビジネスモデル関連のニーズをより効果的に支援するための専門性を提供する必要がある。
ESOの新たな資金調達モデルの構築
今日の経済情勢において、ESOプログラムや、全体的なプログラムポートフォリオの財政的な持続可能性が極めて重要となってくる。景気減速と税収減は公的資金を圧迫する。さらに、政治的なリーダーと予算は定期的に変更されるため、ESOの資金とパフォーマンスに混乱を招く。従来のプログラム収入源、特に伝統的な不動産モデルに関連する収入源は、パンデミック以降魅力が低下している。ESOはこれに応じ、適切に方針を変えながらより多様で異なる収入源を開発する準備が必要である。私たちの見解では、エコシステム開発に関与するリーダーと政策立案者にとって、ESOポートフォリオを定期的に見直し、個々のプログラムの実績を追跡し、ESO戦略と変革マネジメントを推進することは極めて重要なタスクである。これを行うことで、未来に備えることができ、エコシステムとその中の起業家たちを支援し続けることができるようになるだろう。