グローバル・スタートアップ・エコシステム・レポート 2023

RouteXからのメッセージ








塚尾 昌浩 undefined
RouteX COO
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この度は前回2022年に引き続き、GSER日本語版の発行にあたってコンテンツの翻訳責任をStartup Genomeを頂戴したことに感謝申し上げたい。RouteXはスタートアップ・エコシステムに関する情報非対称性を解決する一プレイヤーとして、Startup Genomeとパートナーシップを通じて協働している。情報の非対称性解決に際して言語は避けて通れない要素だが、今回の日本語版発行によって、日本語読者がスタートアップ・エコシステムに関するグローバルスタンダードに触れ、常に振り返りながら日頃の業務やコミュニティ活動を進めていただけると幸いである。


読者の皆様には今回の2023年度版に目を通す前に、前回2022年度版を軽く目に触れていただくことを個人的におすすめしたい。まず昨年版ではスタートアップ投資額が各都市・地域で過去最高を記録し、これまでスタートアップが根付いていなかった地域においてもコミュニティの形成が大きく進んだ1年となった。地域レベルではアジアやMENAなど”Tier 2”と呼ぶべき地域の発展はもとより、アフリカでもユニコーンが3社創出されるなど、スタートアップが国際的なムーブメントとして確固たるものに昇華された1年であった。

一方、戦争という痛ましい出来事に端を発した2023年度版では、市場全体の不安が払拭されず、昨年比特にレイターステージ投資が各地域で大幅に減少した他、各地域のスタートハブとなった都市において次なる成長戦略を模索する1年となったことが伺える。一方、スタートアップ・エコシステムの形成はむしろ地方都市においては堅調な成長が見られ、2023年5月にアメリカ政府主導で次なる発展地域を探索するthe Regional Technology and Innovation Hubs (Tech Hubs) Competitionが実施されたことはその典型的な例である。グローバルとの接続を維持しつつ分散型地域経済を構築する国家インセンティブの元、スタートアップ・エコシステムの次なるフェーズを本レポートを通じて読み取っていただけると幸いである。

そして最後に日本の掲載状況について触れておきたい。今回版では15位で最上位の東京、および新規で福岡が掲載された。また東京に関しては”Knowledge””Talent&Experience”の二項目が国際的な競争力を持っている一方、世界市場との接続を示す”Connectedness”は低い評価となっている。顕在化した課題の認識を持つことはさておき、ベンチマークとなる他のエコシステムに目を向け、相互補完するような取り組みを官民主体で進めていくことが必要ではないだろうか。一朝一夕での解決が難しいトピックであるからこそ、これまで以上に中長期的な目線を持った上で根気強く活動することが求められているだろう。

国家や自治体にとどまらず、協働する民間においても目を通し、グローバルスタンダードの元活動するためのバイブルとして活用されることを期待したい。