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創業者からのメッセージ
この状況を見過ごすことはできない。テクノロジー分野は前例のない減速期の最中にある。バリュエーションが高騰しすぎていたため、抜本的な評価の修正が必要となっているのだ。
世界のスタートアップ・エコシステムの結節点であるシリコンバレーのVCとそのLPは、テクノロジー分野への投資をほとんど停止してしまった。2008年から2009年にかけて金融市場が崩壊した際には、2007年から2009年までのシリーズAにおける資金調達額は31%減少した。同様に、2022年の記録と比べ2023年2月のシリーズAの資金調達額は60%以上減少し、5000万ドル以上のExit案件は80%も減少した。3月にシリコンバレー銀行が破綻し、救済措置についても緊張感が漂った一連の流れは、テクノロジー分野の混乱の度合いを強調しただけだった。
こうしたことは以前にもあった。2001年のITバブルの崩壊は"テクノロジーの終焉 "と言われたが、数年も経てばその予測が完全に間違っていたことが証明された。
今回の低迷はこれまでの危機とはどう異なるのか
十分な収益モデルが欠如していたにもかかわらず、ウェブサイトの人気の高まりを根拠にバリュエーションの高騰が支持されていた2000年の頃とは異なり、私たちは莫大な利益を生む企業を築き上げ、レイターステージのスタートアップが堅実であることを証明してきた。
実際に大不況期を振り返ると、2008年及び2009年に行われたシリーズAへの投資は、2006年及び2007年の時に比べて、1ドルあたりのExit比率が非常に高かった。 後者のリターンが25倍だったのに対し、なんと35倍にもなったのである!これはおそらく、不況下ではバリュエーションが下がりシリーズAの投資案件を成立させられるスタートアップが減少するため、競争相手も減り、優秀な人材へのアクセスが容易になるからだと考えられる。
また、これまでのリターンに関する多くのデータに基づいて分析したところ、現在LPやVCが大幅に投資額を縮小させている根拠は示されなかった。鋭い投資家は、他の投資家が投資を控えている中で流れに逆らって積極的に投資しているだけなのである。
COVID-19が引き起こしたTech系スタートアップの成長は、国ごとに非常に異なる影響を与えている。それは少なくとも現地の保健に関する指針がどれだけ厳格かによって一部説明が可能であり、世界ランキングの変動にも反映されている。インドは2021年及び2022年には世界をリードするような成長を遂げたためランキングの順位を上げており、現時点では他の地域よりも成長の鈍化ペースも遅いためこのトレンドは今後も続く可能性がある。一方で、中国の成長は著しく鈍化している。
一部の評論家は、危機によってシリコンバレーの地位が幾らか低下することを期待している。しかし、起業家精神に基づくイノベーションに関心のある人なら誰でも、世界中の優れた人々や組織への投資と提携によって世界のスタートアップ革命をリードし、強化し続けてきたシリコンバレーを応援すべきだと考える。
スタートアップへの投資の維持が必要な理由
現在の世界中の課題を考えると、テクノロジー分野から革新的な解決策を生み出し続けることが必要である。テクノロジーは経済成長や雇用創出を推進するだけでなく、地球をも救う可能性を秘めている。このミッションは、厳しい経済情勢が続く中で先延ばしにしておくわけにはいかない。皆さんも、不況にもかかわらずCleanTechへの投資をリードし維持しているヨーロッパに感謝し、他の地域もより大規模に参加するようにぜひ呼びかけて欲しい。私たちは一丸となって、差し迫った環境問題に対する革新的な解決策を開発し、拡大していかなければならない。
このような緊急性は、私たちのコミュニティがテクノロジーの範囲と利用を拡大し、現在イノベーションの対象にされずに十分にサービスを受けていない人々を含めることで、より公平なスタートアップ革命を構築する必要性にも通じてくる。一部の人々にとっては、危機の最中では多様性や公平性、包摂性はあまり緊急を要するものではないかも知れない。しかし、それで良いわけではない。どのような経済情勢であれ、私たち全員が立ち止まって考える必要がある。私たちは、自分たちの背景に似た人々を採用して投資するという、ありがちな傾向を変えていこうとしているのだろうか?そして、私たちが生み出した素晴らしい経済的機会をより幅広い人々が享受できるよう、再教育やスキルアップに関わるプログラムを支援しているだろうか?アムステルダム発のTech Groundsやイスラエル発のSNCが提供するScale-up Velocityのようなプログラムは、それが可能であることを示している。このようなプログラムは、世界中のスタートアップ・ハブで必要とされている。
景気の減速はまるで脅威のように見えるが、「禍を転じて福となす」という古いことわざが当てはまることを忘れてはならない。テック業界の関係者が平静を保ち、良い結果をもたらすような革新的な企業を築き続ければ、テック業界は現在の混乱から抜け出し、これまで以上に強く、そして影響力のあるものになるだろう。